選択、洗濯

 ずっとお世話になっていたクリーニング屋さんが昨秋に閉店してしまった。クリーニングに出すような服はほとんどなくて即困らなかったが、衣替えを終え、さて。長押に掛けっぱなしの夫のウール厚地スーツを、クリーニングに出さなくては片付けられず、ようやく重い腰を上げた。

 踏ん切りがつかなかったのは、閉店したお店がとびきり良かったから。店頭にいつもいらした年配のご婦人は、記憶力と細やかな注意力、衣服を扱う確かな経験、その上、お値段がとびきり安かった。おそらく一般的なお店の六割くらい。急ぎといえば無理を聞いてくれて、一週間掛かるものを三日であげてくれた。だから、いきなり路頭に迷った気分なのだ。

 まず周辺のクリーニング店を検索。沢山あって、どこへ行けばいいやら。決めきれず一旦PCを切った。しばらく放置したが、再び奮起。クチコミやお店のホームページを見て、地域で古くからご家族で営んでいるらしい個人経営のお店を選んだ。ホームページには店頭にご家族四人で並んだ笑顔の写真があった。ここならスクーターでちょいと走ればすぐだ。

 こんにちは~と扉を開けると、奥から店頭へ出てこられた小柄な年配の女性は、初めての客と知り、驚き混じりに微笑んだ。預り証を財布に仕舞いながら、なんとなく、このお店にして良かったと思った。

      ♪  短い、優しい詩ですね・・・よろしければ1分足らずの朗読で ♪

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