きっかけがつかめなくて。
見ざる言わざる聞かざるの部屋へ新しい人がやってきた。170センチの長い髪の美女、推定40代。
飼っている小型犬に手を噛まれ、化膿。最悪の場合は切断の可能性もあり、緊急入院。
ここは大らかな病院だから、部屋へ来る看護師さんも看護助手さんも皆、
犬に噛まれたんだって?
と声を掛ける。
なんか、あまりだなぁと思った。
なら自分はどうする? 迷って言葉が出ない、
思い出したのが、どこかで聞いたこの言葉。
転校生に最初に声をかけるヤツを信用するな
どんどん声をかけられない。
向こうは急に他人に囲まれて気詰まりだろうからせめて何気ない言葉くらい交わせないと、居辛いだろうに、
しかし不自然に話しかけられてもそれはそれで嫌だろうし。
そんな意識をして益々何も言えなくて。
二日目の夜、ふと顔があって、そしたら同時に会釈して、次に互いにするすると話し始められた。
リウマチ患者あるあるでしばし盛り上がって。
一瞬で氷結。
人と人との間で発生する摩訶不思議な作用をいつも良い方へ展開できる人を人間力が高いというのかな。