入院日記11/10

 私の入院ルール…テレビを見ない。

 ナンだそんなコトと笑われそうだが、普段は超テレビっ子オバサンで一人の時は観なくてもずっと点けてる。鍵っ子育ちの弊害か。自覚するがゆえ、こんな時くらいテレビから離れよう、その分本を読んで賢くなろう…なんて殊勝な理由だけでなく、バカにならないんじやないかテレビカード代が。

 というわけで本。荷物減らして現地調達。外来ロビーと病棟デイルームに小さな本箱がある。選択肢が少ないから自分では選ばない本を手に取ることになるのが魅力。前入院では、松本清張『点と線』『黒革の手帳』、村上作品も読めた。

 昨夕外来の本箱を漁った。なぜかほぼ時代小説。子どもの頃父と一緒にテレビ時代劇を散々観た結果、今は中村吉右衛門さん主演『鬼平犯科帳』しか観ないし、小説の時代劇には踏み込めないでいる。

 ううむと迷っていたら、後ろから名前を呼ばれた。

 会計の女性。その人は前回五年前も前々回十年前も高額医療の限度額認定の手続き(今もってちんぷんかんぷん、夫の職場で貰う今回限りの保険証?)を、始終穏やかな笑顔で対応くださった。今回も受付時に、その人がまだいるかとカウンターの中を探していたのだ。

「私は入院会計担当だから奥にいるんです、今回もお世話になりますがよろしくお願いします」

「いえっお世話になるのは私のほうですっっ」

 慌てるやら嬉しいやら。覚えていてくださった、過去十年に二回入院しただけの私を。

 そういえば、この病院には十年変わらない  スタッフが多い。

術前検査で心エコー、レントゲン、CTを撮ったが、いずれの技師さんも同じ顔触れだ。

  病棟の看護師さんも、実は夕方から夜勤につかれた看護師さんの一人が、まさに、このブログのタイトル「よろしゅうおあがり」の使い手だった。勝手に、名付け親、である。ひそかに感激した。

 あ!!リハビリの先生も!

 理学療法士は入れ替わりが多い中、今もいた方。

 術後リハビリで専任担当してもらったことはないが、他の人の詐術中のよく通る声とフランクな語り口で覚えていた。前回、私の担当先生がお休み時に代理で一度ついてもらった時…。

 手術した足をマッサージし始めて、ひと言。

「扁平足なんやねぇ」

 絶句。それは我が家の禁句だった。

 数年前、夫が私の足を見て扁平足だと言い出したので、私は猛然と釈明をした。

 違うよ、子どもの頃から私は父に、お前は扁平足と違うなぁ、ってずっと言われて育ったよ。父も弟も真っ平らなのに私はほら土踏まずが窪んでるでしょ。今浅いのはリウマチで足の形が変わったせいで、でもほら真っ平らじゃないよ、ほら。

 しかし夫は取り合わず、私も譲らず。

 その、我が家のもっともデリケートな部分を一刀両断に。

 その人の、顔は見てないが、声が廊下から響いてきた。間違いない。

 夫に即ライン、「私を扁平足呼ばわりした先生がいた!」。