優等生患者、やぁめた

 手術した水曜夜から木、金、土、そして日と、四人部屋で一人になっている。

 しかも、昨日は隣の病室、今日はその隣も空っぽになってて。週末前に退院した方が多いのか。ならば明日月曜には新たな入院患者が入るだろう。

 貸切状態も今夜限りか。

 気持ちの良い陽気で、静かに明るい廊下。もつともエの字型の病棟の向こうには、寝たきりや認知症の高齢患者さんばかりの部屋が多く、早朝に決まってお婆さんの「助けてくださーい、ころしてー」の声が響いてくるし、朝8時半過ぎにはスタッフが一斉にオムツを替えているであろう空気が廊下を占拠する。

 

 過去三度、入院の毎、私はひどくうな垂れて帰宅した。なぜこうも落ち込むのか、と。

 その答えについ先日思い当たった。

 いい患者でいたかったのだ、私は。

 看護師さんの手のかからない、気持ちの良い優等生でありたかった。

 規則を守り、出来るだけ自分のことは自分でやり、笑顔で挨拶とお礼を声にし、控え目に。

 あれ? アメニモマケズじみて聞こえるな^^;

 ところが、例えば給茶に遠慮してしまったり、車椅子やギプスの身で食事のトレーを返しに行って叱られたり。

 入浴日に、うっかり名簿順が飛んでも、職員さん忙しいんだからと飲み込んでしまう。

 しかし、病室内で、職員や看護師さんの接し方を見ていると、騒々しくワガママな患者さんの方が、和気藹々、愛されてる感じがするのだ。

 あれあれあれと焦る。

 これが二週、三週間溜め込まれて、ぷつと気持ちが切れてしまう。

 ワガママな患者の方が接しやすいんだ、私なんか神経質で扱いにくい患者なんだ。

 だから、退院してひと月近く、勝手に傷ついてしまう。

 しかし! この事に気付いてからの今回の入院だから、へんな頑張りをしないで済んでいる。

 いやこんな事を活かす機会はなかったほうがいいのだけど。

 加えて町中の病院ゆえのプライバシー配慮なのか、この病院はいい意味で看護師さんがわりとほっといてくれる。

 気持ちがゆるむ。点滴か済んでも、私はナースコールを押さないし、そのまま1時間経って看護師さんが走ってきても、前の病院の時みたいに、忘れ去られた感で悲しくなる事もない。

 んんん? こういうくよくよは女性だけ? いやわたしだけ??