肉,玉葱,人参,じゃが芋とくれば

 ホームセンターのレジに並んだ。40歳前後の女性店員さんが私の差し出した籠の商品のバーコードをピッと読み取りながら「小鳥を飼ってるんですか?」と言った。
 ああ籠の中身で訊かれたんだ。ペットフードが数点だった。
「はい、インコを」
「うちももうすぐ鳥を買うんです、文鳥ですけど」
「わ~文鳥いいですね、私も子供の頃ずっと飼ってたのは文鳥なんですよ」
「私実は鳥を飼うの初めてで、ちゃんと世話が出来るか心配で」
 そんな話をしながら、バーコードを読み取られていく品を見ていて、少しきまり悪さを覚えた。小鳥の餌と、小動物用ドライフルーツ、そして猫缶。店員さんに”え、この人何を飼ってるの?”とか思われたんじゃないか、と。
 十年ほど前、燕を育てたことがあった。野鳥は本来飼育を禁止されているが事情あって預かった。餌は昆虫、生餌だが、毎日虫網を持って野山を巡るわけにもいかず(もしそうしても十分な量を確保するのは無理)、ミルワームを買って与えた。1、2センチのイモムシとでも言おうか。おが屑に埋めて詰めてあるプラカップが透明だから、よく見るとミルワームが蠢くのが分かる。レジの度、店員さんは手に取って一瞬固まっていた。外から見えないように紙袋にそっと入れてくれる人もいた。一度だけ、「これ、何の餌ですか?」と尋ねた人がいた。いや尋ねて”くれた”だ。気味の悪い買物客に言い訳のチャンスをくれた人。
 買い物は客のプライバシーの一部を如実に表す。店員さんがそれに言及するのはルール違反なのかもしれないが、心が揺れることもあるだろう。他人行儀が当たり前の関係の中で、思わず漏らしてしまう言葉。そこに店員さんのプライバシーも語られて。
 あの店員さんは文鳥を迎える喜びと不安に心躍らせていたのだろう。

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