機嫌のいい時にだけ

 歩いて15分弱のところに大きな公園がある。広い芝生の広場と遊歩道、遊具があり、幼児を連れた家族や、ランニング・ウォーキングする中高年で、晴れた週末ともなれば賑やかだ。

 夫もよく休みの朝にトレーニングに出掛ける。往きはひとり歩いて公園まで、帰りは私がスクーターで迎えに行く。

 公園では大小さまざまなお散歩ワンコを見かけるのだが、その中に時々「バウ、バウ、バウ」と吼えるコーギーがいる。

 街中での飼い犬のマナーとして、日本ではフンの始末のほうが問題視されるが、欧米では無駄吠えが非常に嫌われるらしい。

 コーギーの吼え声は低く太く、私はあまりいい気がしなかったが、何度も見かけるうちに気付いた事がある。

 そのコーギーは初老のおじさんに連れられて現れる。毛並みは少しもさついて、もう若くないらしい、のそのそゆっくりな足取りで芝生を横切ってゆく。全く鳴かず至っておとなしいワンコである。

 ところが、顔見知りのワンコや飼い主さんに出会うと、「バウッ、バウッ」と鳴き出すのだ。

 てっきり怒って鳴いていると思っていたら、さにあらず、尻尾をちりちりと愛想よく振っている。明らかに喜んでいる。どうやらこのコは嬉しい時にだけ鳴くのだ。

 それが分かった途端、吼え声が愛しく微笑ましいものになった。

 怒りや悲しみでなく、機嫌のいい時にだけ声を高くする。中々真似できないな。

M2なF2

 今日はいつにもましてど~でもええ個人的ハナシで…。

 TVでダウンタウン松本さんが「このネタはF2、F3層には全く受けない」と言った時、私は大口開けて笑っていてギクリとしたことがある。常々気になっていた点を突かれた思いがしたからだ。

 TVや広告業界の視聴者層を指す言葉で、分類は以下の通り。
    M1→男性:20歳〜34歳
    M2→男性:35歳〜49歳
    M3→男性:50歳以上
    F1→女性:20歳〜34歳
    F2→女性:35歳〜49歳
    F3→女性:50歳以上

 私は見た目まったり完ぺきな日本のオバちゃんなのに、視点がM2なのだ。披露宴の司会をしていたも、はさんだジョークがウケるのは新郎の友人層だった。

 これは、父・弟との3人家族だった事と、結婚後は夫の見る映画やバラエティしか見なかったからであろう。

 今我が家のハマり物というか録画リストに入っているのは、

 アメリカのドラマ『メンタリスト』 『コールドケース中村吉右衛門さんの『鬼平犯科帳』 『相棒』 バラエティ『マツコ会議』 『月曜から夜更かし』 『マツコの知らない世界Eテレ『0655』 『2355』 『香川照之の昆虫すごいぜ』 『ケータイ大喜利』『水曜どうでしょう』 『週刊バイクTV』…。

 また家で一人TVを点けっぱなしにする時のプレイリストは『刑事コロンボ』 『攻殻機動隊』シリーズ 『ガリレオ』シリーズ 『ブレードランナー』 『黒い十人の黒木瞳』『劇場版SP』を延々リプレイ…。

 他に何度も見るのは『フォレストガンプ』 『MIB』 『スターウォーズ』シリーズ 『バンドオブブラザーズ』…あ、勿論ファースト・ガンダム世代です、好きなキャラはマチルダさん。

 私一番のお奨めは『メンタリスト』です!!

 こうして日々M2,3へと精進を続け…同じ趣味の女性いらっしゃいませんか~^^;

 唯一F要素を留めるのは読み物で、女流小説、特に向田邦子さんが大好き!

50年目の反抗期

 元々かなり怠惰ではあったが、近頃、急に体が重くて何もしたくなくなることがある。そんな時に限って、頭の中ではこれをしてあれも済ませてそれを片付けなきゃと分かっているから、余計に追い込まれる。

 この心身の重さはもしやウツでは…と思った次の瞬間、いやいや自分でウツを疑った時点でウツではない、まだ余裕があるのだろうと苦笑いをこぼした。

 それにしてもこの一年ほどは色々あった。まず昨春の手術と入院、昨秋に父が亡くなり、今年5月に義父が亡くなった。その間の諸々もあるし、義父は、寝床で息を引き取っていたのを発見したのが私だから、自分では平気だったつもりでも意外とショックを受けていたのかも…なんて、逃げ口上にイチオウ挙げてみる。

 或いは、私、今頃になって父への反抗期なのかも。

 というのが、夫に叱られるのがとてもこたえるようになった。私が悪いのだけれど、反省を通り越し、自分に愛想が尽きて、辛くて情けなくて。もう怒られたくない。それで、詫びの言葉の次に出るのが、
「私には無理、アナタの奥さんは務まらない、自分が嫌になる、アナタを100%怒らせない若くて良い奥さんを探して」。

 夫にすれば何を極端な事をと驚くし、夫婦喧嘩だと思うだろう。けれど私には亡くなった父への反発が思い当たるのだ。

 父は昭和一桁生まれの雷親父で、手こそ上げないが、何かにつけ厳しく叱られた。勿論口答えなど許されない。幼い頃はそれでよかったが、私も成長につれ、父の言い分の間違いや偏見にも気がついてくる。それでも父が絶対だった。そして結婚前には夫との交際を反対され、ようやく結婚を認められた後も、何か父の気に障ることがあると「結婚式には出ないぞ、親が出席しない結婚式なんて出来ないだろう、お前の結婚をぶち壊すことだってできるんだ」と脅された。あの頃既に父も老いて感情が壊れていたのだろう、その後まもなく軽度の認知症を現した。

 結婚という区切りを得て、生い立ちを俯瞰できるようになった私は、昨秋の父の死によって一気に解放された。それどころか反動が出ているのだろう。叱られるという状況そのものに酷く動揺する。

 叱られると、まず咄嗟に酷く委縮し、しかし次には目の前の夫に怒りを覚えるのだ、そんなに私に腹が立つのか、それほど私が悪い事をしたのか、と。(逆ギレやんっ)

 今年の暮れに50歳になる。老眼、髪に白いもの、五十肩…体はちゃんと半世紀生きた証しを物語るのに、心はようやくスタートライン。根深い傷のカサブタが剥がれ落ち、遅すぎるけれど今ここに立っているのが本来の私。ただ。夫には全く以って申し訳ない限りである。夫は私の救世主だ。だから夫にも今後の人生が幸せであって欲しい。

猫に、鼻歌

 前回書いた通り、野良猫だったアポロは少しずつ我が家の家族になっていったから、付き合いは7年目でも現在進行形な関係だ。ブラッシングも先月始めたばかり。

 トイレだって今年になってやっとうちでするようになった。だから、まだまだ気まずそうにする。猫トイレは台所の隅に置いているので、私が流しに立っていると、アポロは、そそくさと目を合わさないように後ろを通っていく。その緊張感に負けて私が一時台所を撤退することもある。

 こないだはコンロのそばを離れることが出来なくて、けれどアポロを委縮させまいとして、咄嗟に鼻歌を歌い出した。あさってのほうを向いて弱くのん気な、ふんふんふふ~ん♪……オカンはアポロのことなんか気にしてませんよ、アポロもオカンを気にせずにどうぞ~。

 アポロは静かに用を足し、ざっこざっこと砂をかけて台所を出て行った。

 なんかね、猫相手に鼻歌を歌っている自分が後から可笑しくて。

どうしてあげるのが一番?

 アポロは元野良で、7年前にふらりと庭に現れた。耳にV字の切れ込みがある地域猫で、恐らくその処置の際の恐怖からだろう、とても警戒心が強かった。

 懐くことは一生ないと思いながら餌を与え初め、しかし少しずつ少しずつ信頼を結び、今では寝起きを共にしている。

 それでもアポロの怖がりは健在で、家の周りでちょっとでも不審な音や気配を感じると、外へ飛び出して行ったり、唸り声を上げて机の下で蹲ったり。

 こんな調子だから常々心配しているのは、アポロの具合が悪くなった時のこと。

 撫でられるけれど抱っこできない。どうやって獣医さんに連れて行く?

 追い詰めて無理やり捕まえてキャリーケースに入れたりしたら、かえって状態が悪化しそうだし、病気が治ったとしても、心の傷は大きくなり、アポロはどこかへ行ってしまうかもしれない。猫仲間とも付き合い下手なアポロ。うち以外に安定して餌を食べられる場所も安心して眠れる場所も見つからなかったら、寿命を縮めるに違いない。

 どうすればいいか、答えの出ないまま暮らしてきた。

 数日前の朝、夫が言い出した。アポロのわき腹から3センチくらいの糸が出てる、撫でると糸の根元は毛に隠れているが、豆粒代のしこりを感じ、そこに触れるとアポロが飛びのくから、どうなっているのか確認出来ない、と。

 釣り針が刺さって? 私も見るが、糸はナイロンぽくない。白くて僅かに縮れている。

 敏感なアポロは、夫が執拗に触ろうとしたからもう警戒して距離をとってしまう。

 なんだろう一体。どうしたらいいかと心配は募るが、アポロが元気そうだし、とにかく様子を見ようと、夫を仕事へ送り出した。

 さてと。最初の1時間は何もせず、アポロが自分から近付いたタイミングで、アポロの好きな腰トントンをし、横倒しになったところで体を撫でた。幸い糸の出てる方を上に向けている。初めは背中から。そのままわき腹へと大きく掌をスライドさせ…、別にアポロは痛がりも嫌がりもしない。豆粒のしこりも体内ではなさそう。そこで思い切ってスリッカーブラシでマッサージをしてみると、問題の箇所は、毛が縺れて固まり、抜け毛が撚り合わされて伸びているだけだった!

 ふ~、助かった~~。
 まだまだ答えなんか出ない。ただただアポロの健康を願う。