あくまでも『ごっこ』

 わたしは、人種差別や格差社会には反対であって、

昨今意識の高まってきた、多様性を謳歌できる世こそ素晴らしいと思います。

 ですのでこれから書くことは、あくまで、私が私だけに抱く、自己満足の、いわば趣味の範疇のコトだと聞き流してください。

 

 いい加減替え時の夫の歯ブラシをドラッグストアで選ぶ。決まった商品はない。今回はどれがいいかなぁ・・・パッケージに謳われた効能と値段とを天秤にかける。

 ヘッドの大きさはスタンダードかコンパクト、毛の硬さは普通。近頃夫は歯間の汚れを気にしていたから、歯と歯の間に極細毛が入り込むという商品で『店長おススメ!今月の特価奉仕』178円を取る。よし、これにしよう。

 夫のを替える時に自分も替える。さて私は、と。ヘッドはコンパクト、硬さはやわらかめ、歯周ポケットに届くものをいつもチョイス。候補が三つばかりあった。良さげと思ったものは198円也。う~む・・・夫のより高いのはイカンな。

 夫はケチでなく、たとえ十倍の値段でも気に入ったものを買いなさいと常々言ってくれる。私は経済的にかなり苦しい育ちだったので基本ケチだが、結婚して26年、子どももおらず、親も送り、残りの人生を思う年を迎え、去年辺りからは財布のヒモの握り加減をもう少し緩くしたっていいんだよと言い聞かせている。

 けれど、現在、仕事もせず、家に居て、暫くは体を大事に養生しなさいと夫に労わられる扶養家族の身の上。おまけに亡くなった母の影響で、どちらかと言えば古臭い、亭主関白っぽいやり取りが好きだ。

 ほくほくと、次点の158円をカゴに入れ、レジへ向かった。