自分の存在意義を問う

 決してノロケなどではなく、ウシロメタくてこれを書いている。
 バレンタインに私は市販のマカダミアチョコを買っただけ。珍しくも高くもない、けれど何度か買ったことがあり、夫が好むと分かっているもの。手作りは気を遣わせるし、チョコケーキとかだと、夫の帰りが遅くて夕食が22時過ぎたりしたら胃もたれしてしまうから(今年50歳の夫婦)。プレゼントも考えるけれど、夫は身に付ける物、趣味の物一切を自分で選び、欲しいと思ったらその日のうちにネットでポチるから、私の付け入る隙が残っていない。結婚22年、特にこの数年は手詰まりを感じている。
 ホワイトデーに夫は小ぶりながらホールのチーズケーキを提げて帰宅した。私の好きな洋菓子店の。「え~っ私はマカダミアチョコしかあげてないのにぃ」と気まずく言い訳をする私に、夫は更にもう一つ、これも高級洋菓子店の紙袋を差し出す。クッキー6枚が可愛いカップに入ったギフト。私はクッキーが大好きなのだ。
「そのカップさ、ラインの赤いのと青いのがあって、迷ったけど、青のほうが可愛いと思ったんだ。早速これでコーヒーを飲んでみなよ」と夫は瞳を輝かせる。勿論カップは可愛いが、それでは済まない、実はこの店のクッキーが滅茶苦茶美味しく、1枚200円近いことを知っている私は縮み上がる。
 嬉しいを通り越してひえ~となるも、ここは腹をくくって夕食後に美味しい美味しいとケーキを食べて、さて翌日、後ろめたさのあまり生まれて初めて私は『海老で鯛を釣る』という言葉を辞書で調べた。
 話はそれるが、調べながら新たな疑問も。海老だって高級食材よね。
 その後一週間、毎日1枚ずつクッキーを食べた。口の中でほどけるクッキーはもうほんとに美味しくて二重に打ちのめされながら。
 前々回書いた通り、この頃私は自分のダメ妻加減に凹んでいる。
 あらためて見直すと、洗面所に掛けているバスタオル。夫のを手が届きやすい手前に掛けておいても、私のお風呂上りには私のが手前に来ている。もしやとバスマットの真ん中を踏むと、乾いている。端を踏むと湿っている。
 今までもずっとこうだった夫と、どんどん思いを酌めなくなる妻。そんな夫婦になっている気がして、夫婦はバランスだと常々思っているから、余計に恐ろしくなる。