夫のフォロー

 夢を見ていた。仲間3~4人でお伊勢参りに行こうと、特急列車にわいわい乗り込むのだが、そこは夢、同行者たちは私の知らない人ばかり。実際にはアラフィフの私含め、全員が60オーバーだった。

 目が覚めると、先に起きていた夫が私の顔を覗き込んでいた。私の顔が笑っていたのか、それとも寝言を言っていたのだろう。私はついさっきまでの賑やかさの余韻の中にいて、ふふふと笑いながら、口を開いた。

「あのね、おばちゃん仲間で旅行に行く夢を見ててね…」

 すると夫がさえぎった。

「おばちゃんじゃないよ」

「え?」

「(私の名)は、おばちゃんじゃないよ」

 あらそこに引っかかる?と思ったが、そこを否定してくれたことが、その後時間がたつにつれてじわじわと嬉しくなったのだった。

 

 そういえば、姑が言っていたっけ。

「この子は小さい時、冗談ででも人を悪く言わなかったのよ。この子が3~4歳の時、パパが私に向かって『ママに言ってやれ、出っ歯の出っ尻って』とけしかけたら、この子はもじもじして言わないの。そういう優しい子だったわよ」

 

 年齢的にはおばちゃんと言って差し支えないのだけれど、夫は私をおばちゃんと見ていない、いや妻をおばちゃんだと認めたくないということかな。

 夫の思いに応えたい、そう感じて、今日は丁寧に洗顔している私。


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たらちね、な響き

「よろしゅうおあがり」

 看護師さんに言って貰ってはっとなった言葉だ。

 この春の入院中のこと。ご馳走様でしたと食器を返す患者たちに、ひとりだけ、「よろしゅうおあがり」と答えてくれる看護師さんがいた。

 そんな年配のひとじゃない。だけど、石けんと押し入れの匂いが混じった、お祖母ちゃんのフトコロを思い出させる響きがした。

 全く聞いた事のない言葉ではないから余計に心にかかるのだ。

 調べてみると、関西の方言で、「おあがり」と言っているけれど「召し上がれ」ではなく、「ごちそうさま」に対する答え。

 標準語にするならば「お粗末様でした」といったところだそう。

 因みに…”よくぞ私の料理を食べて下さいましたね”という意味なので、食べ残しがある場合には言わない、というのも面白い。

 夫に拵える、いつもはご飯のお弁当を、珍しくサンドイッチにしたところ、昼休みにラインが来た。

『おいしかった、ありがとう』

 照れくさくて、返信に迷って……使ってみちゃった。

『よろしゅうおあがり』

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