朝夕涼しい。例年ならまだ残暑が残る頃だが、今年はこのまま秋になるのか。
夫の一ヶ月強の出張という、かつてない夏を経て、毎日繰り返す家事にさえ安らぎを感じられる。
ゴミに出そうと、段ボール箱に伸ばした手が止まる。貼られたままの送り状。この箱は、出張先から夫が持ち物を宅配で送り返したものだった。
送り主に夫の名前、宛先に私の名を書いた夫の文字。それは、夫の不在中にあって、配達員さんから受け取って目にした時、胸をどきりとさせた。
まだケイタイなんてない三十年前の、付き合い始めたばかりの頃に交わした手紙のような、切ない。
しかし、あの頃とは違う。遠い空の下にいる夫、ひとり寝起きする私。それでも私達は繋がっているのだというような、感慨。
剥がした送り状を手帳にはさみ、段ボール箱を畳んだ。
♪ 短いけれど心を打つ。朗読ですがよろしければ全文どうぞ ♪