あなたがいなくてわたしは

 朝、セミの声にハッとした。今年初?  いや、もう数日前から鳴いていたのかもしれない。今朝耳に入ったのは、ようやく落ち着いてきたから?

 夫が留守になって6日目。関西から関東へ、予定ではひと月強帰らない。結婚して24年半、出張など滅多になく、これまでこんなにも長く家を空けることがなかったから、出発前からざわざわして、出かけてしまうとがらんとなってしまって。

 専業主婦の私は普段夫のペースで暮らしている。出勤時間から逆算して起き、あとは緩やかに帰宅時間めがけて過ぎていく。ごくたまに一泊の社員旅行があったりすると、何時に夕ご飯を食べたらいいか分からない。第一、自分ひとりの為に料理することもなかった。

 こんなふうだから、夫を見送った後、家に入って、台所で立ち尽くした。何をすればいいか分からないのだ。

 とりあえずシンクの食器を荒い、きょろきょろして、炊飯器に目が留まった。私ひとりならご飯は炊かない。しばらく使わない。よし磨こう。すると炊飯器が載った家電ラック本体と電子レンジとトースターとフードプロセッサーも気になった。普段ほったらかしなのに、食事もせずに徹底的に磨いて、お昼を過ぎていた。

 恥ずかしい話、こんなに掃除をするのは通常の精神状態ではないからだ。

 ともあれ綺麗になった家電達を見るのは清々しい。ラックを動かしたことで水屋やシンク、コンロ周りも目に付いて、翌日から「今日は何をしよう」とキッチンを見回している。長く置きっぱなしのダンボール箱も片付けた。

 少しすっきりした台所で夫を迎えられるかな。

 ところで、この夫不在を機に、私的大プロジェクトに取り組んでいる。詳細は次に。

  ♪ 4分強の掌編です・・・よろしければ・・・  

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