それは誤解じゃない

 行きつけの美容院が十周年記念にエコバッグのプレゼントを行っていた。

 紺、キャメルベージュ、ライトグレーといずれも落ち着いた三色。お好きな色をどうぞと言われ、え~っと、明るい色がいいな。

「グレー」と声にしかけた一瞬先に店員さんに、

「紺かベージュかな」

と言われ、言葉が詰まった。思わず店員さんの顔を見る。店員さんはにっこりと、

「○○さんのイメージからするとこの二色のどちらかでしょう」

と続けた。

 私のイメージってどんな・・・。どうしよう。「グレー」と言って驚かせようか。が、期待を裏切りたくないような気持ちになった。紺かベージュか・・・紺のほうがいいけど、ええい、いっそ。

 「ベージュを」

「やっぱり。もうイメージ通りだわぁ」

 紺とベージュ・・・保守的で地味といったところかな。

 自分が思う自分と他人が思う自分にはズレがある。人が見ている自分はある意味、自分の本当の姿だ。世界が自分をそう見ている、自覚できないところで滲み出ている自分の姿。

 一体自分はどう思われているのかと複雑な気がしないでもないが、今回私は嬉しかった。美容師さんが私のイメージを持ってくれていることが。十年のお付き合いで育まれたものがあるということが。