空き箱さえも気遣いの国

 チョコレートや焼菓子が好きで、時々背伸び気分で外国のお菓子を買ったりする。
 食べたことのない初めてのパッケージをわくわくと開封・・・・・が、これがなかなか開けにくい。開け口が分かりにくかったり、うまく開かなかったり、そもそも開け口のミシン目がないものも。
 いや、普通なのだ、こんなもの、これで十分な筈。
 しかし、こんな時、日本のお菓子のパッケージの親切ぶりが身に沁みる。
 例えばクッキーの箱。
 スムーズにミシン目に従って開く外箱。開け口は開閉を繰り返せるよう、差込口が用意されている。
 中袋も、切れ目が入りやすく作られていて、矢印が方向を指示してくれている。 
 食べた後は、捨てるのに箱が嵩張らないように、畳むためのミシン目もある。そこへ指を押し当てれば簡単に開く。
 十年以上も前のことだ。M社のビスケットの外箱に、この捨てる際用のミシン目を発見した時、
「ちょっとサービス過剰なんじゃないの、いくらなんでもやり過ぎよ」
と思ったものだ。
 ところがその後、自分がリウマチになり、指先が痛み、上手く動かせなくなり、手の力も衰えてみると、その心遣いがとても有り難く、助かるのだ。ミシン目の有り無しがストレスにさえ感じられるほどになっている。
 以来、何かの蓋が固かったり、機構的に開けにくかったりすると、
「ちょっとちょっと、こんなのお年寄りや手の力の弱い人には無理よ」
なんてぶつくさ言っている。
 先々月に脱臼して不自由を味わった時といい、身をもって不具合を感じないと、差し出された親切に気付けないなんてと情けなくなる。
 ともあれ、日本は思い遣りがそこここに溢れた国だと思う。