猫に、鼻歌

 前回書いた通り、野良猫だったアポロは少しずつ我が家の家族になっていったから、付き合いは7年目でも現在進行形な関係だ。ブラッシングも先月始めたばかり。

 トイレだって今年になってやっとうちでするようになった。だから、まだまだ気まずそうにする。猫トイレは台所の隅に置いているので、私が流しに立っていると、アポロは、そそくさと目を合わさないように後ろを通っていく。その緊張感に負けて私が一時台所を撤退することもある。

 こないだはコンロのそばを離れることが出来なくて、けれどアポロを委縮させまいとして、咄嗟に鼻歌を歌い出した。あさってのほうを向いて弱くのん気な、ふんふんふふ~ん♪……オカンはアポロのことなんか気にしてませんよ、アポロもオカンを気にせずにどうぞ~。

 アポロは静かに用を足し、ざっこざっこと砂をかけて台所を出て行った。

 なんかね、猫相手に鼻歌を歌っている自分が後から可笑しくて。