お使いが遅かったワケ

 小学生時代のお使いの思い出話になった、夫と。
 私は父に命じられ、豆腐を買いに行った。その帰りにレジ袋をすとんと落としてしまった。豆腐は容器の中で崩れていた。それを父は「こんなもの使えるか」と怒りをあらわにした。
「でも子どものそういう失敗って怒っちゃいけないと思うの。そこへいくとアナタのお母さんは怒らないよね」
「うんお袋は怒らないなぁ。マーボ豆腐にするつもりだったとでも言いそうだ」
「いいお母さんだったよね。あ、あの話聞いたことあるよ、アナタをお使いに出したら1時間半も帰らなくって…」
 これも小学生時代、義母はお醤油が足りなくなり、夫にお使いを頼んだ。が、待てど暮らせど帰らない。これが初めてのお使いでもない、何かあったのかと心配極まりきった所へ、夫がへとへとになって帰ってきた。聞けば、義母が普段行く商店街やスーパーを3軒回り、「これが一番安かった」と胸を張ったという。「まあ、ありがとうね…」安堵のち苦笑い&感激の義母。
「遅いっ、て私だったら怒っちゃうかも。だって今欲しくて頼んだのに」
 この話をしてくれた時の義母は、「調味料とかお野菜とか頼むと、あの子ね、”それは何に使うの?”って訊いて行って、その用途に合うものを自分で選んでくるのよ」と、誇らしげだった。
 夫は母親に一生もののお駄賃をいっぱい貰って大きくなったんだな。f:id:wabisuketubaki:20180415111209p:plain