等身大の父が

 今日は義妹と出掛けた。2人きりで会うのは初めて。妹といっても私より年上のしっかり者だ。父が亡くなって半年が過ぎた今頃になって保険証の返納やらに手を付けたら、喪主を務めた弟の通帳等が要ると分かり、義妹が同行してくれることになった。朝から車で連れて行って貰い市役所へ。
 用が済み、ランチを一緒して貰い、話すうち、弟が亡き父と同じセリフを口にすることが知れた。雷親父だった父は私や弟を厳しく叱ったが、その後、シュンとする私達に「分かったならもうええ、もうええから、あっさりせえ」と言った。いつまでも暗い顔しているな、からりと気持ちを切り替えていつも通りに振舞え、ということだ。弟も、小学生の娘を叱った後、よく「あっさりせえ」と言うらしい。
 子供の頃、父のその言葉が有り難かったし、怒りを引きずらない父はカッコいいとずっと思っていた。
 しかし、久しぶりに耳にしたその言葉に、父の側の心情が浮かび上がってきた。
「あっさりせえ」は子への思い遣りよりも、父自身の辛さを消す為だったと思うのだ。
 躾として叱ったものの、しょげかえる子の顔を見ていると後味が悪くてたまらなかったのだろう。
 妻に先立たれ、独りで子育てを余儀なくされた40代の父がそこにいる。