違っても仲良し、違うから面白い

 「性格が違うから合わないってよく言うけど、人ってみんな違うのが当たり前で、違うから面白いんだよ、違っても仲良くなれるんだよホントは」
 20代の頃に聞いた、友人の言葉をこれまでに幾度思い出しただろうか。国際結婚して海外で暮らすようになった彼女とは音信が絶えてしまったが、いつまでも尊敬する友人だ。
 結婚以来仕舞い込んだまま未使用の食器やなんかを、リサイクル業者へ持ち込んでも値が付かないだろうからと、ネットフリマに送料と手数料ほどの値段で出品している。
 普段からネットショッピングをしない私にとって、ネット上の売買は未知の世界、初めての経験で、購入者とやりとりをしていると、いろんな人がいるんだなぁと感嘆する事しきりである。
 随分前に内祝いで頂いたティスプーン6本セットがあった。デザイナーさんのプロデュースで、1本ずつビニールに包まれたままのスプーンが化粧箱に納まっている美品だ。
 箱のサイズは厚い新書本くらいで送料が600円かかる。手数料は1割引かれる。赤字にならなければいいと800円にした。100均でスプーン6本買うより少しだけ足して品質の良いものを手に入れられるなんて、いいじゃない。
 すると間もなく問合せがあった。挨拶に続き、
「箱は要らないので、700円になりませんか?」と。メルカリでは値引き交渉もフランクに申し込まれる事が多い。この方は私より取引経験が多く、箱無しにすれば配送料が下がるから100円引いても大丈夫でしょ?と提示下さったのだ。確かに、送料は175円になるのだ、私の利益も増える。
 しかし、だ。ちょっと戸惑ってしまった。品物は古いが新品未使用。せっかくの綺麗な品なのだから、私なら化粧箱入りのセットとして受け取りたい。それを箱は要らない、なのか。う~ん…ほんとに要らないのかな、いいんだろうか、いっそ私からのサービスとして箱で送ろうかしら。
 そうして30分近く逡巡した後、ふっと考えの向きが変わった。この方は、使う気なんだ。私みたいに無駄にとっておかず、届いたらすぐ使う。だから箱は要らない。それを私が箱で送ったら、箱を捨てなきゃならなくなる。
 いろんな人がいるねぇ、と夫に話しながら、私はつい自分の物差しで測ってしまう視野の狭さを思っていた。