バレンタインイブに

 チョコを買っても、夫は結局チョコ好きの私に半分以上食べさせるからなぁ。そんなふうだからこの頃は特に何もしなくなってきているけれど、どうしようかな明日のバレンタイン…。
 夫のことはある意味、神様から貰ったご褒美だと思っている。かつてきっぱりと純粋に愛情を貫くことが出来たご褒美に。
 夫は中学2年のクラスメートだった。美術の授業で”友達の顔を描きましょう”の相手が、出席番号順でたまたま夫だったことから親しくなった。夫には彼女がいた。彼女と言っても、携帯もない時代の田舎の中学生の交際である。家族の手前、互いの家へ電話も出来ず、放課後の部活前に同級生の目に留まらないよう廊下の端で並んで座って言葉を交わし、そっと交換日記を手渡しする、そんな交際。彼女は理想の文系女子だった。清楚で柔らかな印象、趣味はお菓子作り。
 それに引き換え、私は、当時の自分を盛ることも卑下することもなく言えば、ブスで真面目な優等生で、自分が正しいと思ったら先生にも不良グループにでも意見する変わり者だった。本当は男に生まれたかったという願望を諦めきれず、自分のことを俺と言ったり、わざと蟹股で歩いて窓を飛び越えたり。とんでもない奴を気取るようなところがあった。
 そんな私がいつしか夫のことを好きになっていた。そのことに気が付いた時、それは同時に失恋が確定した瞬間だった。(続きます^^;)