絶対の幸せって

『幸せを相対的に感じている限り、本当の幸せは得られない』
 お隣のSさんから借りた本の一説だ。
 例えば…足の手術から1年を経て、正座は出来なくても私は小走りできるまでに回復した。街中で杖を使い、ぎくしゃくと歩く人を見かければ、私の不自由なんか何でもない、有り難い。こんなふうに考えていたら、この先もし両足を切断しなければならなくなった時、私は自分の不幸を嘆かねばならない。つまり、人と比べて自分は幸せだと考えている限り、その幸せは他の誰かより不幸である。そんな条件に左右されるものではなく『絶対的な幸せを見出さなければならない』と。
 これを読み、以前出席した披露宴で聞いた祝辞を思い起こした。
「これから君達は二人で幸せな家庭を築いていくわけですが、その幸せは決して人と比べないで下さい。幸せは競うものではありません。二人にとっての幸せを二人で見出し、育み、分かち合って下さい」
 ところでこのスピーチには続きがある。
「しかし、今言った事と矛盾しますが、”この夫婦”にだけは負けないで欲しいと思う夫婦があります。”この夫婦”よりも是非とも幸せになって欲しい。それは君達のご両親であり、ご両親の願いであるからです」
 忘れられないスピーチになっている。