もしや”褒めて伸ばそう”と?

 なんでかな、夫はやたらと……こんな良い事にこんな言葉を使うとバチが当たりそうだが……やたらと「ありがとう」を言ってくれる。
 朝。ご飯が出来たよと起こしに行くと「ありがとう」、食卓に着いて「ありがとう」、食べ終わって「ありがと、ごちそうさま」、その食器を下げようとする私に「ありがとう」、「着ていく肌着、ここに出したよ」「ありがとう」、猫の飲み水を換えてたら「ありがとう」、……
 夜。お迎えに出た私に「ありがとう」、鞄から空のお弁当箱と水筒を出して「ありがとう」(←お弁当箱はウェットティッシュできれいに拭いてある)、「お腹空いたでしょ、すぐご飯にするね」「ありがとう」、「ご飯出来ますた~」「ありがとう」、食卓に着いて「ありがとう」、食後おやつを持ってくると「ありがとう」、歯ブラシに歯磨きを付けて渡すと「ありがとう」、布団に寝そべる夫に「もう本読まない?電気消していい?」「ありがとう」。
 夫婦円満の秘訣として”親しき中にも礼儀あり、ありがとうの言葉を忘れずに”なんて聞くけれど、多すぎない? そんな大したこともしてないからこっちがかしこまっちゃう。で、思わず「ありがとうを言ってくれ過ぎだよ」と返してしまったことが何度かある。或いは「ありがとうは病気持ちで家でごろごろしてる私のほうなのに、アナタのほうが多いのはおかしいようっ」と。うん、私より絶対に多く言ってる。
 結婚して20年余、元々行儀の良い人だったけれど、初めはこんなにも言ってなかったと思う。多くなったのはここ数年だろうか。お義母さんが亡くなってからではないかしら。
「ねえ、ひょっとしてお義母さんが亡くなる前に何か言ったの、お嫁さんを大事にしなさい、とか?」
「いいや、なんにも」
 分からない。とにかく私も「ありがとう」を言い忘れてないかを時々点検する。

 いやそれよりも、有り難く受けて”妻”業を頑張ればいいんだろうけれど、気になるよねぇ。