ゆさとのお別れ 1

 ゆさがとうとう帰ってしまった。10月28日の朝に。享年13歳と7ヶ月。

 今日でちょうど2週間たった。
 何と言えばいいか分からない。何が書けるか分からないけれど書いてみる。ゆさがくれたものを留めておきたくて。少しずつ、やってみよう。

 ウサギの寿命は8~10年だとか。ゆさは、よく小学校の飼育小屋で見かける、ミニウサギといういわゆる雑種の比較的丈夫な種だ。なぜミニウサギというのだろう?ウサギの中では体の小さい種ではないのに。
 ありがたいことにゆさも、生後3ヶ月くらいで我が家に来て以来ずっと健康でいてくれた。私が身構えていた8,9,10歳の誕生月も難なく越えてくれた。

 そんなだから油断していたのだ。3年前の、10歳5ヶ月のある朝、ゆさが突然発作を起こした。大きな音が聞こえてケージを見ると、ゆさの後ろ足が利いていない、引きずっている。頭も片側へ傾いていて、まともに歩けない、体をまっすぐに起こしていられない様子だ。そして何より、ゆさ自身の動揺がひどかった。いったい何が起こったのかとパニックを起こし、今度はフライパンで爆ぜるポップコーンのように暴れた。数回飛び上がってケージの天井にぶつかったのち、息を荒げ、動悸に体全体を大きく波打たせ、呆然としていた。

 慌てて動物病院を受診。こんな時の為にと買ってあったキャリーケースにバスタオルを敷いて連れ出した、これが、ゆさが我が家へ来て以来初めてで、そして最後の外出になった。

 ウイルスが脳へまわったらしい。抗生物質の投与と、あとは食欲が戻るかどうか。年齢が年齢だけに回復は難しいだろうと私は内心諦めていたが、ゆさは夜には餌を口にし、症状も数日で治まってしまった。

 私は感謝すると同時に、これまでを省みた。拝読していた幾つかのウサギブログの飼い主さんは、どなたもとても大切にお世話をしている。たとえばウサギさんの調子が悪いとなると、コロコロ糞を拾い、数を数えるほどだ。私はゆさに対し、あまりにも最低限でぞんざいだった。

 以後、少しずつ、餌の内容、運動量、ケージ掃除に気を配るようになった。それでも十分とは言い難かったが、ゆさは11, 12, 13歳の誕生月を越えてくれた。

 誕生日、ではなく誕生月というのは、誕生日が分からないからだ。生後間もなく公園に箱に入れて置かれていたのを保護され、持ち主が現れることなく地元の警察署で2か月近く育ち、縁あって我が家に来た。ゆさが保護された経緯の詳しいことを私達は知らない。誕生月にしても、ゆさが来た時の体の大きさからさからの推定でしかない。

 ウサギを飼うのは初めてだった。ウサギに対し、私はあまりいい印象を持っていなかった。小学校にいたウサギは表情に乏しく見え、可愛いと思えなかった。だからウサギを飼おうと夫が言った時、私は嫌がった。が、夫は「もう引き取るって言っちゃった」。
 渋々迎えたウサギは、けれど大らかで天真爛漫で、奇しくも拾われたのが戎神社の総本社のある町だったから、神様の御遣いだと夫と言い合った。今でも思っている。