ハイ今日から秋!

 残暑と台風が寄せては返し、いつまでも暑いけれど、季節はやはり進むのだ。
 今日、金木犀の香りがした。
 午後になって買い物に出ようと玄関の扉を開けたら、風の中にふわりと混じっていた。斜向かいのお庭に立派な金木犀の木があって、枝に目を凝らすと、淡いオレンジの粒々が見えた。
 金木犀が香ったら秋。そう決めている。だから今日から秋。毎年9月の25~28日頃に開花する。9月も終わろうとしている。
 今月、父の3回忌が行われた。法事は納骨堂のあるお寺で弟夫婦がすべて準備してくれて、私は数珠を持って行くだけでよかった。
 祭壇に向いお経をあげて下さる住職、その後ろには、真ん中に通路が開けられ、左右に数列のイス席が並ぶ。私の前に弟とその娘が並んで座っていた。
 娘(姪)は今年小学6年生。年に一回会うかどうかなので、私にとってはいつまでも幼稚園くらいの頃のあどけない表情があるのだが、今の彼女は、身長もほぼ私と同じで、私より肩幅が広い、どこのお嬢さんかお姉さんかという感じに成長している。もうじき思春期の難しさが出てきたりするのかもしれないが、今の所はまだまだお父さん子である。
 声を潜めて親子が。
 姪「ねえどれくらい?」
 弟「30分くらいかな」
 暫くして、退屈したのだろう姪が弟の顔を窺う。すると弟は合掌した手に姪の視線を引きつけておいてから、指先をくっつけたまま真ん中を開いていき、ハート型を作った。次の瞬間、姪が弟のわき腹へ肘打ち。
 ああいいなぁ、と思った。子のいない私には眩しく微笑ましくて。
 来年五十になる弟の人生の秋は、これから大いなる実りに満ちていくのだ。