また過日の僥倖

 ショッピングモールの中の静かな一角、保険会社の店頭にて。

 おじいさんがうつむき加減に佇んでいる。視線の先には、体長1mはあろうかというアヒルアフラックのぬいぐるみ。

 その首っ玉に1歳になるかならぬかの幼子が抱きついている。アフラックに小さい体ごと擦りつける様にして悦に入っている。マタタビを貰った猫のごとくに。

 通りかかってその光景に出くわし、つくづく思った。

 大人って損だなぁ、つまんないなぁ。確かにアヒルの巨大ぬいぐるみは可愛いけれど、抱きしめるには低く、結局それは保険会社のマスコットでしかない。

 それに比べて幼な子の瞳にはなんの偏光フィルターもかかっていない世界が広がるばかり。ただただ夢のように大きくて頼もしいアヒルに出会えるのだから。