お香典は全額返してはいけないのだと思い知る(苦笑い。
5月に亡くなった義父の四十九日も済んだので、お香典返しを発送した。
葬儀の時から、夫は言っていたのだ。
「親父に頂いた気持ちは全部お返ししたいんだ」
ある朝突然目覚めなかった義父。退職して20年、付き合いも狭まっていたので内輪で済ませた葬儀だが、親戚や変わらず交流のあった方が悼んで下さった。
「お金で返すのはアレやけど、物じゃなく、カタログギフトも欲しいものが載ってないことがあるし、受け取った人が好きな物を買えるような…」
そこでギフト券に決めた上でネットで調べてみると、お香典の全額返しもあり得ないことだが、ギフト券のように金額が分かるものも失礼に当たると知る。う~ん、でも。
マナー違反であることを夫に説明の上、「でもアナタは考えを変えないよね」。
「うん」
「挨拶状作ったり、送料もかかるし、マイナスになるけどいい?」
「うん。親父の残した金を使えばいい。うちは金は要らん、精一杯お返ししたい」
義母が生前、夫のことを言った。「あの子はケチじゃないからほっとするわ」
オトコのケチってイヤだもの、と。義父は少しケチだったと思う。
また夫を評した『常識は無いけど良識はある』にも義母はウケていた。夫は大学時代に服部を”ふくべ”、城崎を”しろさき”と読むようなところがあったが、誰にもフレンドリーで、人の嫌がる役目に黙って手を上げる人間だ。
マナー違反は承知の上で夫の思う通りのお返しを整えた。
さて発送翌日、受け取った方から電話が相次いだ。「こんなに…お父様が亡くなって大変でしょうに、気を遣わせて、何をしたやら分からない、かえって…」と。
「申し訳ありません、失礼に当たるかと思いながらも、義父に頂いたお気持ちが本当にありがたかったので、出来るだけお礼をさせて頂きたいと夫が申すものですから、お許し下さい。今後ともよろしくお願いします」
でも、もうやっちゃ駄目だねと夫と笑った。が、そんな機会はもうないか。
これで私達夫婦には祖父母も両親も亡くなり、子どももおらず、50歳を迎える年に見事にふたりぼっちになってしまったなぁと、そんなことを考える。
昨年秋に私の父が亡くなった時は、葬儀、手続き、遺品の処分までほぼすべてが3日で済んだから、人の一生なんてあっけないものだなんて思った。
でもそれは父が既に親戚付き合いもなく施設で暮らしていたことと、仏壇などのお祀りを弟に託したからであって、簡単でも、終わったわけでもない。
葬儀と各種手続き、手つかずの家財、法事。
夫は相続に関する書類作成と手続き、私は四十九日法事とお香典返しを一つの節目のように感じていたが、それも7月になって片付いてほっとしている。あとは、義父の車関連、百か日と納骨、一周忌、・・・未来に配された飛び石を踏みながら、一人の人間の残した足跡を葬っていくのだ。