いきものじかん#2 救い?掬い?

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 私達夫婦が最初に向かえたのは亀でした。

 18年前、夏祭りの夜店に亀掬いが出ていました。水の中に500円玉大のミドリガメがうじゃ~と入れられ、あぷあぷもがいているのが可愛くて可哀想でした。

 1回500円、5匹掬って1匹貰える。夫は器用です。やれば連れて帰ることになる。

「亀は長生きだからな」「どれくらい?」「30年くらい。それに大きくなる」「どれくらい?」「20㎝以上」

 責任をもって飼えるのか迷いながら祭り会場をぐるぐる30分きっかり歩き回りました。そうして出した答えは「この子と定年退職のお祝いをしよう」、当時私達は30歳でした。夫は途中でポイを亀の鋭い爪に破られながらも7匹掬い、目を引いて元気そうな子を1匹貰って帰りました。

 こうして我が家に初めての仲間がやってきたのですが、生き物に向き合う姿勢には人間性が出るなとつくづく思いました。私はアバウトで、テキトーな水槽に入れて餌をあげればいい程度に考えていたのですが、夫はまず帰りに書店で亀の飼い方関連を3冊買い、翌日はホームセンター3件はしごで水槽、水質改善剤、砂、ブクブクポンプ、甲羅干し用の浮島、餌類数種、他にもアレコレ…2万円ほど使ったでしょうか。真剣にグッズを選ぶ夫に呆れながらも、「この人はきっとこんなふうに子育てするんだな」と感じました。

 亀は「ぬす吉」と名付けられ、半年後に雌と判明しますが後の祭り。今は小ぶりな湯たんぽ大です。

 ミドリガメの正式名称はミシシッピーアカミミガメ、外来種です。近頃テレビ番組の「池の水を抜く」企画で、日本古来の在来種を駆逐するヒール扱いですが、悪いのは人です。数十年前から手軽なペットとして売られ、余り知識もないまま飼い始めたところが、大きくなってきて飼いきれず、身近な水辺に捨てたのが繁殖しているのですから。
 日本に昔から住む石亀やクサガメはとても温厚ですが、ミドリガメは俊敏で時に獰猛です。後ろ足が物凄く逞しいのです。その訳は、ミシシッピー川でワニや鷹から狙われる為、強力なキックで水中を逃げなければならないのです。いじらしい。

 「ぬす吉」と一緒にいた子達はその後どうなったのでしょう。「ぬす吉」だってあまり良い待遇を受けているわけではなく、申し訳なく思っています。そしてその邪気のない生き様に心が洗われる。救われたのはたぶん私達夫婦のほうです、きっと。