こなれていく時間

 調味料でこうも違いが出るものかと驚いている。
 今月初めに亡くなった義父の使いかけのあれこれを持ち帰った。普段私が買わない味のドレッシングに新鮮な驚きを感じたりして楽しんでいたのだが。
 切干大根を炊くのに、出汁の素とお醤油を拝借し、味見をしてビックリ! 味が分からない。甘みは効いているのに、ふんだんに入れた筈の出汁の風味もしないし、お醤油の塩気もまるで足りない。追加してもどこかへ消えちゃう感じ。幾度か繰り返したものの、味が決まらない。どう直していいのか分からない。ともかくも入れるべきものは入れた。正しくさじを投げた。そのまま食卓にのぼらせ、次第を話し、夫と箸を伸ばした。口に入れ、夫と顔を見合わせた。
 ふしぎな事に翌日には味が落ち着いていた。使った調味料を改めて手に取った。
 義父は人工透析を受けていたのと高血圧だったことから、出汁の素もお醤油も減塩タイプだ。これなら普段より体に良さそう~なんて意気揚々と使ったのだった。
 料理があまり好きではない私にも、我が家の味付けが出来上がっていた事を思った。結婚して20年余の日々は流れたのではなく、積み重なっている。