自分のことを人前でなんて言う?

 オチのない話なんですが、こないだから義父の事を書いてて、ふと。
 義父は「ワシ」だけど、私の父は「ボク」だったな、と。考えてみれば亡くなるまで、85歳になっても「ボク」だった事を思うとなんだか可笑しい。
 夫が言う。
「それはお父さんが京都の人だからじゃない? 浜村淳さんもだよ。子供の頃から「ボク」と丁寧な言葉を使うように教えられたって」
 ふーん、そうなのかな。父のそれはちょっと見栄張りのボンボン気取り気味。
「アナタは「オレ」か「自分」でしょ。弟は中学生くらいから突然「わい」と言い出したの、不思議だったな」
 なぜそうなのかは分からないけれど、弟の「わい」は照れ隠しっぽかった。そこには自分のことを話す弟の、伏し目がちの小さい笑顔がセットになっている。そうだ使い始めたのはちょうど思春期だ。
 私は「ワタシ」。「ワタシ」「アタシ」、女性にはバリエーションが少ないな、なんて一人称について調べると、女子でも「あたい」「わて」「うち」等々色々ある。
 気がつくと既に使っている、自らを語る言葉を私達はどうやって選んだのだろう。