立ち止まったままだ、良くも悪くも

 メイクをするのは昨年6月の甥の結婚式以来、10カ月ぶり!
 鏡を覗き込みながら手順を思い起こす。仕事を辞めて一番嬉しかったのは化粧しなくていいことかもしれない。それほど嫌いなのだ。マスカラがカピカピに乾いてしまっていた。塗れない。それすら、後でメイク落としが楽だ~と思ったほど。いいさ、今回はレッスンなんだから。
 昨日は、ブライダル司会の仕事を頂いていた事務所を訪れた。間もなくデビューする司会者さんのレッスンを、先輩から頼まれたのだった。
 引き受けたものの、仕事を離れてもうすぐ丸2年、忘れているんじゃないかと不安を抱えて降り立った午前11時の大阪の繁華街は、神戸とは違うエネルギーに満ち溢れている。毎週通っていた頃にはこんなこと思わなかったのに。関節の炎症が強めに出ていたこともあって、気おくれごとエレヴェーターに乗りこんだ。
 が、生徒さんを前にしてみれば、自分自身にブランクを感じなかった。
 錆びついていなかった。安堵が心を上気させる。レッスンを終えて駅へ向かう午後の道は心地よく気だるい陽気に輝いていた。そういえば行く時には痛かった首と肩が楽になっている。緊張感をもって暮らさないとダメなんだなと実感した。