そしてバレンタインは*追記有

(昨日の続きです)
 私が好きになった人は別の人を好き。それが目の前の現実。だけど、本当にこの想いはどうにもならないのかと頭の中の自分に食い下がってみた。どうすればいい? 彼女から奪う? まっぴらごめんだ!! そんな事をして万一彼が私に振り向いてくれたとしても、私は自分に対する後ろめたさに一生苛まれる。そんなの耐えられない。それに。そんな形で恋人を変える彼なんかいらない。彼女を大切に想う彼が、私は好きだった。彼はいい人だ。想うのは私の自由で今は止められない。叶わなくたっていいじゃない、彼が幸せなら。彼の幸せが私の幸せ。よし、決めた! 自分の想いは墓場まで持っていこう。
 私は彼の親友を目指した。彼と彼女の交際を全力で応援した。2人の内緒事はいつしか3人の内緒になった。時には胸がずきんと痛むことがあったが、毎日は充実しきっていた。そして中学を卒業し、別々の高校へ進み、3人の繋がりは絶えた。
 その後、私と夫との交際は、大学時代に再会してからのこと。
 彼の幸せが私の幸せ。そんな無私な想いは、きっと思春期の純粋さゆえだ。その後の私は強くも高潔でもない。夫に他に好きな人が出来たらどうしようと、結婚してから今までに何度となく考えてしまい、怖くなった。しかし次の瞬間、まあいいか彼が幸せなら私と一緒じゃなくたって、そう思えて、す~っと気持ちが楽になる。
 中学時代に夫のことを潔く諦め、片恋を貫いたからこそ、のちに神様は夫と再会させてくれたのだと思っている。結婚して21年、今はもう真っ赤になって震える手でチョコを差し出さなくていいことにホッとしている。もうあんな怖い思いはごめんだ。それでもやっぱりささやかに何か…とゆうべから迷って、夕ご飯をはりきって作ることにした。食後に一緒に頬張るつもりで彼の好きなマカダミアナッツチョコを、スーパーで籠に入れて、えへへと笑った。

*潔さだけ語った形になっちゃいましたが、もし私が略奪を決意しても、叶わなかったと断言できます。ほんとにダサダサなトンでもない女子でしたから(笑