物だって元気に長生き

 形あるものはいつか壊れる、という言葉は、儚さを説いたものだと思うが。
 ものって長持ちするのだなぁとつくづく感じる。
 スプーンとフォークが1組、ティスプーン2本、シュガースプーン1本、ガラス角皿3枚、楕円皿1枚、耐熱ガラスのティカップ1個。これらはすべて母が亡くなった時に既に家にあったから、少なくとも42年は使っていることになる。
 大学へ入って下宿生活を始める時に持ち出し、結婚した時にそのまま持ってきた。本当はシュガーポットもあったのだけれど、これは4年前に割ってしまった。お茶碗なんかをよく割るのは母譲り。
 ガラス皿は縁を何か所か欠けさせているが、昔の製品らしい分厚いものだから割れてしまわずに、夏には冷や奴を受け止めて食卓に上がってくれる。時々箸を止めて、まだここに在ることにしみじみしてしまう。
 ひとが諦めなければ時にものでさえ永遠に生き続けることが出来るのだと、そう思わせてくれる器たち。思わぬ母からの贈り物だ。