好き、という気持ちだけ

 日曜日だけど夫は出勤で、ウィークデイと同じように、梅雨曇りな昼下がりをぶらぶらとスーパーマーケットに出かける。

 持ち重りのするエコバッグを肩に自動扉をくぐって歩き出し、ふと思った。

 子供もいない専業主婦の私って、アポロと一緒じゃん。

 アポロというのは6年前に我が家の庭に現れた野良猫。ものすごく警戒心が強くて、とても懐かないと思っていたが、少しずつ少しずつ慣れてきて、うちで寝起きするようになって、今では家族だ。すっかり甘えん坊。猫というのは仲間や触れ合いを求める生き物らしい。

 据え置きのゴハンを食べ、水を飲み、好きなだけお布団の真ん中で眠り、好きな時に外へ遊びに行く。帰ってくるとしっぽを立ててくねらせ、ただいまと鳴く。

 私は、朝起きてお弁当を詰めて、夫に声をかけて、夫の食事を調えて、肌着と水筒を出し、出勤を見送る。日中は最低限の家事。しなくても夫は何も言わない。夜に夫を迎え、食事を並べ、一緒に食べ、おやつをつまみ、TVを見て、眠くなったら歯磨きする。うつぶせで枕に顎を載せて携帯ゲームする夫の背中や足を、踏んだりもんだり叩いたり。やがて夫が寝入ると、隣に横になる。そこには近頃遠慮のなくなったアポロが伸びているのをグイと押して私のスペースを確保する。夫と私とアポロと、いびつな川の字を書く。そんな毎日。

 たいした事していないなぁ。これぐらいなら夫はひとり暮らしして自分で何とかできるだろう。そして私は、夫が稼いだお金で自由にアイスクリームやチョコレートを買い、夫が働いている日中にのんびりTVやパソコンに向かう。アポロと一緒じゃん。

 アポロがうちにいるのは私が望んで、アポロがうちを気に入ったから。

 私とアナタも同じ、でいいの?