たそがれどき

おととい、夕食の準備で流しに立っていて、ふいに”ああお父さんはもういないんだ”と思い出し、ふうわりと寂しさが漂った。亡くなった時から淡々と受け止め、変わりない生活を送る自分を俯瞰し続けてきたが、3ヶ月半経って、これが初めての心底からの実感では…

夫婦喧嘩は猫にだって食わせるな

「1組の夫婦には2人以上の子どもを産む責任がある、でないと人類は絶滅の途を辿る」 大学時代、経済学の教授が語ったこの説は、授業の合間の脱線だったにもかかわらず、なぜか記憶に留まり、結婚しても子を望まず、授からずの私を度々苛んできた。 しかし「…

呪文が解けて

この年の暮れ、お煮しめの里芋を剥いている間ずっと、ある思いが胸にあった。 甲斐甲斐しかった姑が十数年前に亡くなって以来、お正月は舅の為の行事になった。年越し蕎麦、煮しめ、雑煮、鰤の漬け焼き。舅の好むものだけを用意し、大晦日と元日に夫の実家で…

毎日の始まり

年末年始のお休み中は寝坊を通したから、ゆうべ目覚まし時計をセットする時に「明日の朝起きられるのかしら」と呟いてしまった。が、5時半のアラームを鳴らすことなく止め、お弁当を詰め、夫に声をかけて朝食を出し、着替えと水筒を用意した。 仕事始めの夫…

あのバスに乗ればいい

明日は百か日。父が亡くなって明日が百日目。 百か日法要は卒哭忌(そっこくき)とも呼ばれ、この法要をもって残された遺族は「哭(な)くことから卒(しゅっ)する(=終わる)」、つまり悲しみに泣きくれることをやめる日である。…こう書いてると、父が「お前、ち…

なにがあっても

デパートで玩具を買ってと地団太を踏み、叫ぶ子に、親はこう一喝したという。「Don't be panic」 取り乱すな。 以前TVで紹介された”紳士の国”イギリスの光景。玩具をねだる我が儘よりも、人前でみだりに感情を露わにすることの方が問題だ、何時いかなる時…

天使たち?

日曜日のお昼時、饂飩屋さんの店内は賑わっていた。夫と席に着くと、お子さん連れのご家族があちらにもこちらにも。パパママの間で箸を握りしめる幼児のぷっくり丸っこい手指を垣間見ていると、通路の向こうの座敷卓で掴まり立ちをする赤ちゃんが目に留まっ…

松尾芭蕉さんへの誤解とお詫び

『松島やああ松島や松島や』 有名な句である。 俳句の基本の季語がないのは、松尾芭蕉が、松島の絶景に感動のあまり季語を入れる隙もないという表現だと、習ったと思う。しかし、これがありなら俳句って何だ? 私はこの句をずっと卑怯だと思っていた。やって…

絶対になくしたくないもの

外付けハードディスクが昨日から開かない。パソコン本体を軽くしておきたくて、私も夫も保存したいものは写真でも文書でもすべて外付けへ入れていた。ふたりで「え~?!」となり、「ちょっと待てよ」さしあたって何が困るだろうかと考えた。夫は、お気に入り…

ポケットの中身

物事を後回し先延ばしにするのはいつものこと、2ヵ月半たってようやく、他のドライ洗濯物と一緒に父の形見のベストを洗った。薄手のウールで前ボタン開き、背広の下に着る、父はチョッキと言ったっけ。 チョッキとベストはどう違うのかと今更の疑問をググっ…

かけがえのない毎日

たかが夕食の時間の逡巡だった。「もうちょっと後にする?」「そうだなぁ、も少し後にするか」「そうね、も少しお腹空いてからね」「ああ。待つと空くかな、あんまり遅くなると胃に良くないけどな」「あらじゃ、今から用意する?」 ここで夫の苛立った答えが…

悪徳業者??

昨夕、古着、靴を買い取らせて下さいと、軽快な女性の声が電話で社名を告げた。履かなくなった靴、破れてなければTシャツ1枚でもお出しください、今日はお近くを社の者が回っていますと言う。不用品は沢山あるが大したものもないし、急に言われてもガサゴソ…

天使の翼は誰の背中にも

大人になると失くしてしまうもの…陳腐にさえ聞こえるが、それを思わずにはいられなかった。幼児は全く別の世界を生きているようだ。 保育園経営に携わる友人が幼児作品展の案内をくれて、ふらりと、久々に友人の顔を見られればと出掛けた。しかしギャラリー…

願い

「これをしちゃ駄目」と言ったことをことごとく実行する…とある認知症の方の事が書かれていた。駄目と注意されるとその事に意識が向く。向いても、通常ならそれを我慢するが、自制心が弱いのが子どもと認知症。 禁止より肯定で。分かってて出来ないから余計…

謝れ、人の本質は善だ!

滅多に混まないコミュニティバスに、ジャージ姿の一団が乗ってきた。中学生ぐらい、クラブ活動の遠征だろうか。十数人ほどがどんどんと乗り込んで、通路に立ち並んだ。正直、ちょっと憂鬱になった。この子たちはおそらく終点の駅前までいる。私は途中で降り…

子どもの感性が大人の脳を揺さぶる!

これは何を描いたものでしょう?? 竹馬ですって。 これはママと観覧車にのってるそうです。 ちんあなごのかぞくのごはん、メニューは炒飯。 燕の赤ちゃんがお母さんを待っています。 「新・童美展」行ってきたんですが、昨日の感動が去らない。 今日と明日…

父語録。殴る、は駄目だけど

折に触れ、父の言葉が読み出される。それは亡くなったからではなく、もうずっと私の日常だ。 台所で小麦粉を水で溶いていると「ぬるま湯を使うとダマになりにくいで」とか、夏にご飯を炊く時は「お酢をちょっと入れると腐り難いんや」とか。「お米には七人の…

苦くて、苦くて、

先週、20年ぶりに伯母を訪ねて乗った私鉄は、これも20年前、結婚するまで勤めていた会社の近くを通る。車窓の光景の一々が脳の奥のほうにじんじん沁みた。感慨の内訳は大きく2つ。1つは恋人と会えなかった辛さ、そしてもう一つが勤務先への心苦しさ。社長に…

あえて明るい服を着て

昨日書いた「黒」のことで、あるバレエ教室のブログにぎくりとなった。 生徒のレオタードについて『黒は締まって綺麗にみえちゃうとこあるので、できるだけ普段のお稽古は薄い色きて身体のラインをしっかり見せて下さいね!』 …どうりで近頃、黒いセーターに…

黒は本当はこの世に存在しない

おととい。ブラックフライデーとTVで何度も告げられ、ん?ブラックマンデーじゃなかったっけ??買い物に行くと店頭のポップにもこのロゴが踊っていて、知らないのは私だけかと慌てて調べた。”米国で毎年11月第4木曜日に催される感謝祭Thanksgiving Dayの…

肉,玉葱,人参,じゃが芋とくれば

ホームセンターのレジに並んだ。40歳前後の女性店員さんが私の差し出した籠の商品のバーコードをピッと読み取りながら「小鳥を飼ってるんですか?」と言った。 ああ籠の中身で訊かれたんだ。ペットフードが数点だった。「はい、インコを」「うちももうすぐ鳥…

あなたを笑ませたくて

ポインセチアやクリスマスソングが街を彩り始めた。さて。どうしよう。 私たちは昭和な夫婦だからイベントに特に何もしない。ちょっとしたものを贈り合うくらい。なのだが。この”ちょっとしたもの”に年に2回、夫の誕生日とクリスマスとに私は打ちのめされる。…

年は”取る”より”重ねる”で

年々寒がりになると感じる。去年の冬を過ごした部屋着が今年は既に11月にしてうすら寒い。 昔は朝出掛ける前に済ませたら夜帰るまで行かなかったのになぁ、と夫と話す。トイレのことである。私は特にトイレが遠く、高校時代は3年間に学校のトイレを使ったの…

地球は青かった

きび団子を差し出されても岡山県人は受け取りませんよ、家来になれってことですから…と某芸人さんがTVで話すのを聞いて、まさかと笑ったが、次の瞬間いや待てよとなった。夫に話すと「まさか」と笑った。「ネタに決まってるやん」「私だってそう思ったけど、…

忘れないで待ってるよ

匂い、嗅覚の記憶が五感の中で最も強いと聞いた事があるが、触れあいや温もりの記憶も負けていないんじゃないかな。触覚ということではなく、通わせた心の記憶。 生後1か月半ほどの子猫と過ごしたのはちょうど1年前だったなと、近頃懐かしんでいる。わずか2…

キャッチボール

昨日の件。帰宅した夫に開口一番謝ると「なんだそんなこと。それよりもさ…」と会社での出来事を語りだした。専業主婦たる自分の世界の狭さを実感。いえそれが有り難い。一日私を押し潰していた事なんか塵のように吹っ飛ぶ。夕食後に一緒に食べた苺大福の美味…

さざ波ではあるけれど

今日はちょっと、いやけっこう落ち込んで過ごした。 前日に私が時計をいじったせいで、夫がいつもの出勤電車に乗れなかった。ずっと6分進んでいた時計が、4分進みになっていたのに気が付かず。あああ、怒っているかな。いつものように帰るコール(ライン)をく…

あした天気になあれ

今日は雨降り。桜の赤い落ち葉が濡れそぼってアスファルトに貼りついている。昨日までは踏むとぱりりとポテトチップスを噛んだような音が楽しかったのに。 夏が済んだ途端、来年の手帳が店頭に並び、年賀状やお節の予約承りの文字がそこここに。今年もあと47…

刻まれた遺産

猫だけでなく我が家にはウサギとインコとカメがいる。ウサギやインコに接していて時々苦笑いしてしまう。例えば、うさぎを部屋へ放して遊ばせる時に「うりゃうりゃうりゃ…」などと言いながら追いかけっこしたり、インコを手の中に包んで撫でている途中にイン…

父に最後のイタズラ

友人から早々に喪中はがきが届いた。私もいよいよ急がなくてはと焦った。毎年の年賀状は私が我が家の動物たちをイラストに描いてスキャンで取り込んで作るが、ああ今年は作らなくていいんだ…そう思うと、寂しいようなほっとするような。さてと、集めておいた…